2019年9月1日「柔らかな答え、良い返事」箴言15:1〜33

序−世界的に有名な言語学者が、答え方が人生を決める、コミュニケーションで本当に重要なのは、「質問力」よりも「応答力」だ、と書いています。果たして、私たちは、どれほど答え方に留意しているでしょうか。箴言でも、答え方が大切であることを教えています。

T−柔らかな答え、穏やかな舌−1〜2,4
 前章で怒りについて学びましたが、今日の箇所で、「柔らかな答えは憤りを静める。しかし激しいことばは怒りを引き起こす」と言っています。1節。傷ついた感情は、怒りを吐き出します。怒りは、胃潰瘍、大腸炎、動脈硬化などの病気を起こします。もちろん、怒りを受けた人の心も傷つけ、怒らせます。人生をも台無しにします。怒りは、治癒される必要があります。
 過去を振り返ってみてください。子どもの頃家庭で、学校で、大人になって職場で、結婚生活で感情が傷つき、怒りが蓄積されます。ですから、怒りは言葉に反応して出て来ます。治癒される必要があります。それなのに、愚かな者の激しい答えは、怒りを引き起こします。偽りの舌は、非難やあざけりで人のたましいを破滅させます。4節。自分の言葉が、他の人を生かして癒しているのか、傷つけて殺しているかを考えてみましょう。何も考えずに吐き出しているその言葉は、どうなのですか。
 柔らかな答えとは、優しい言葉という意味です。柔らかな優しい言葉が憤りを静めるのです。怒りを癒す穏やかな舌は、いのちの木のように、人の心を生かします。4節。柔らかな言葉、穏やかな舌は、人を生かし、人を癒します。人格を生かしてくれて、肉体までも癒してくれます。
 私たちが使用している言葉は、感情に刺激を与え、人間関係に最も大きな影響を与えます。答えるためには、よく聞かなければなりません。2節。相談の基本は、来談者の言葉を注意深く聞くことです。知恵のある者の舌は知識をよく用います。相手のことを知って、なぜ怒っているのか、どういう状況なのか知っていれば、激しい言葉ではなく、柔らかな答えをすることができます。相手の感情や状況、おいたちについて考えたことがあるでしょうか。そういう知識も必要です。
 柔らかな答えをするには、柔和な人になる必要があります。柔らかな答えとは、言葉だけ柔らかにしたものでなく、その人格が柔和だということです。柔和な人は、激しいことばが来る時にも、柔らかな言葉で穏やかに応答します。柔和な人の特徴は、主の目を覚え、主を意識しています。3節。その柔和さは、信仰の生まれ変わりで受ける性質です。
 まず、私たち自身が癒されなければなりません。どのように癒されるのですか。イエス様の十字架の愛で癒されます。私たちの古い自分は、十字架で主と一緒に死に、新しく生まれ変わった自分が復活された主と共に生きています。ガラテヤ2:20。イエス様が、私たちの傷を癒される時、医者のように薬で治療するのではなく、イエス様自らその痛みや傷をその身に負ってくださり癒してくださいました。イザヤ53:3〜5,Tペテロ2:24。最大の癒しは、主の福音です。神様は、イエス様を十字架に渡されるほど、あなたを愛しておられます。イエス様は、あなたのために十字架に死なれました。信じた者は、罪赦されています。天国へのいのちを与えられています。これらの救いの言葉は、福音を聞く者のたましいを癒します。

U−物質の環境よりも言語環境が重要−13,15〜17
 世界的な教育学者ベンジャミン・ブルームは、人の環境を物質環境と言語環境に分けています。そして、物質の環境よりも言語の環境の方がはるかに大事だと言います。重要な環境は、衣食住等の物質の環境がよい所ではなく、良い言語環境を作ってくれる所です。このことを教えている面白い表現があります。16〜17節。多くの財宝があって、豪勢な食事ができる物質環境でも、信仰のない憎み合う環境は、悪い言語環境であり、不幸なのです。一方、貧しい物質環境でも、信仰があって愛し合う環境であれば幸いだというのです。そこには、良い言語環境があるからです。
 世間では、良い物質の環境ばかり考えて、幸いを追求しています。しかし、重要なのは言語環境です。家庭に良い言葉を交わすコミュニケーションがあるかどうかが、子供の成長を実りあるものとし、夫婦の幸せを左右するのです。自分のいる所が良い言語環境であれば、心に喜びがあり、心に楽しみがあります。13,15節。家庭において、柔らかな言葉、穏やかな舌があるでしょうか。学校や職場等自分のコミュニティーにおいて、柔らかな優しい言葉、穏やかな舌で答えているでしょうか。
 夫婦関係を専門に研究しているジョン・ゴットマンという心理学者は、科学的に直接的に夫婦の観察を行った結果を発表しています。離婚をする夫婦を観察すると、性格の違いなどよりも重要な理由は、言語方式、つまり会話の仕方が問題だと指摘しています。夫と妻が、互いに向けて、相手を非難したりののしる言語を使い、相手を無視したり、軽蔑する態度をとり、自己防衛をし、互いの間に壁を築くのです。
 彼が研究により発見したのは、会話の中で夫婦がお互いの言葉から感じることが肯定的か否定的かという要素が大きいということです。仲の悪い夫婦は、負のスパイラルに突入したかのように、否定的なイメージでお互いを見るようになります。そして、否定的な言葉を多く使うようになります。そして、言葉を受け答えすることにおいて、肯定的言語と否定的言語の割合が重要であると強調しています。賞賛、励まし、受け入れ、認定などは肯定言語であり、指摘、叱責、非難、ののしり等は否定言語です。基本は、肯定的言語が圧倒的に多いのですが、少なくなって来ると、その関係は危なくなっているというのです。
 賞賛の言葉は、使えば使うほど関係は良くなって、人生を豊かにしてくれます。賞賛する言葉は、最も美しい言葉であり、力ある言葉です。非難や文句を言われるより、認めて、賞賛をくれる方が、相手に良くして、愛するようになるのではないですか。温かい賞賛の言葉は、ご馳走よりも薬よりも、人を健康にします。励ましの言葉は、それを聞く者の心を癒し、人生を生きかえらせます。落胆している者に、神様はあなたを愛しておられます。私が祈っています。そのような言葉がどれほどその人に勇気を与え、立ち上がらせてくれることでしょうか。また、感謝の表現が、人を喜ばせ、人生を価値あるものとします。ちょっとした感謝の言葉が、心を潤し、勇気を与えます。
 相手に肯定的な印象を与える話しを心がけることが大切だということです。よくあるように配偶者の性格を直そうとすることは、関係をより困難にします。相手を直そうとしないで、そのまま受け入れて認めようとするのです。そのように、お互いに向けたアプローチを変えることが大切だと教えています。彼の指摘した結論は、シンプルな会話をしなさい!ということです。肯定的な受け答えをして行くには、簡単なお粗末な言葉でも使っていこうというのです。共感して、うなずきを与え、後で自分が言いたいことを言って、子供のような言葉でいいのです。

V−どう答えるかを思い巡らす−23,28,30
 私たちにとっては、言葉は単なる言語以上です。私たちの言葉は、人格そのものであり、信仰のあらわれです。ある言語哲学者は、人格は言葉によって現れる。言語がその人の教養の尺度であり、人格の尺度であると言っています。私たちにとって言葉がいかに大切か、箴言で学んでいます。
 今日の箇所では、どう答えるかの重要性を教えています。28節。コロサイ4:6では、いつも親切で、塩味のきいた言葉にすれば、答え方が分かると言っています。良い知らせは、聞く人の心を健康にします。30節。そして、「良い返事をする人には喜びがあり、時宜にかなったことばは、いかにも麗しい」と言っています。23節。良い返事をすることによって、人の怒りを沈め、励ましや勇気を与え、自分も喜びを得ます。
 良い返事でも、時や状況にあわなければ、良いものではなくなります。時宜にかなった言葉も必要です。時宜にかなった言葉とは、英語訳では、a timely wordと翻訳されています。時と状況に合った適切な言葉は、最高に美しいというのです。果たして、私たちの口から出ている言葉は、良い返事ですか。時宜にかなった麗しい応答ですか。失敗したと後悔することがないでしょうか。答えた後で、あそこで言うべきではなかった、あのような意味ではなかったのにと後悔するのです。結果的に周りの人に不適切な言葉や傷つける言葉を言ってしまった経験もあるでしょう。そんな意図ではなかったのに、ごめんなさいという思いが生じます。振り返って思い出し、黙想して、悔い改めます。
 使徒パウロは、若い伝道者テモテに対して「かえって、ことばにも、態度にも、愛にも、信仰にも、純潔にも信者の模範になりなさい」と言っています。Tテモテ4:12。最初に模範として勧めているのが、「ことば」です。他のことも模範にならなければならないが、まずもって自分の「ことば」が模範となるようにしなさいと勧めています。模範どころか、躓かせる言葉とならないようにしたいですね。私たちは、家族をはじめとした様々な人間関係の中にいます。言葉のやり取りをして生きています。ですから、柔らかな答え、良い返事をする必要があります。私たちの言葉が、「人の徳を養うのに役立つ言葉」になることを願います。エペソ4:29。



箴言15:1 柔らかな答えは憤りを静める。しかし激しいことばは怒りを引き起こす。
15:2 知恵のある者の舌は知識をよく用い、愚かな者の口は愚かさを吐き出す。
15:3 【主】の御目はどこにでもあり、悪人と善人とを見張っている。
15:4 穏やかな舌はいのちの木。偽りの舌はたましいの破滅。
15:5 愚か者は自分の父の訓戒を侮る。叱責を大事にする者は利口になる。
15:6 正しい者の家には多くの富がある。悪者の収穫は煩いをもたらす。
15:7 知恵のある者のくちびるは知識を広める。愚かな者の心はそうではない。
15:8 悪者のいけにえは【主】に忌みきらわれる。正しい者の祈りは主に喜ばれる。
15:9 【主】は悪者の行いを忌みきらい、義を追い求める者を愛する。
15:10 正しい道を捨てる者にはきびしい懲らしめがあり、叱責を憎む者は死に至る。
15:11 よみと滅びの淵とは【主】の前にある。人の子らの心はなおさらのこと。
15:12 あざける者はしかってくれる者を愛さない。知恵のある者にも近づかない。
15:13 心に喜びがあれば顔色を良くする。心に憂いがあれば気はふさぐ。
15:14 悟りのある者の心は知識を求めるが、愚かな者の口は愚かさを食いあさる。
15:15 悩む者には毎日が不吉の日であるが、心に楽しみのある人には毎日が宴会である。
15:16 わずかな物を持っていて【主】を恐れるのは、多くの財宝を持っていて恐慌があるのにまさる。
15:17 野菜を食べて愛し合うのは、肥えた牛を食べて憎み合うのにまさる。
15:18 激しやすい者は争いを引き起こし、怒りをおそくする者はいさかいを静める。
15:19 なまけ者の道はいばらの生け垣のよう。実直な者の小道は平らな大路。
15:20 知恵のある子は父を喜ばせ、愚かな者はその母をさげすむ。
15:21 思慮に欠けている者は愚かさを喜び、英知のある者はまっすぐに歩む。
15:22 密議をこらさなければ、計画は破れ、多くの助言者によって、成功する。
15:23 良い返事をする人には喜びがあり、時宜にかなったことばは、いかにも麗しい。
15:24 悟りのある者はいのちの道を上って行く。これは下にあるよみを離れるためだ。
15:25 【主】は高ぶる者の家を打ちこわし、やもめの地境を決められる。
15:26 悪人の計画は【主】に忌みきらわれる。親切なことばは、きよい。
15:27 利得をむさぼる者は自分の家族を煩わし、まいないを憎む者は生きながらえる。
15:28 正しい者の心は、どう答えるかを思い巡らす。悪者の口は悪を吐き出す。
15:29 【主】は悪者から遠ざかり、正しい者の祈りを聞かれる。
15:30 目の光は心を喜ばせ、良い知らせは人を健やかにする。
15:31 いのちに至る叱責を聞く耳のある者は、知恵のある者の間に宿る。
15:32 訓戒を無視する者は自分のいのちをないがしろにする。叱責を聞き入れる者は思慮を得る。
15:33 【主】を恐れることは知恵の訓戒である。謙遜は栄誉に先立つ。



イザヤ53:3 彼はさげすまれ、人々からのけ者にされ、悲しみの人で病を知っていた。人が顔をそむけるほどさげすまれ、私たちも彼を尊ばなかった。
53:4 まことに、彼は私たちの病を負い、私たちの痛みをになった。だが、私たちは思った。彼は罰せられ、神に打たれ、苦しめられたのだと。
53:5 しかし、彼は、私たちのそむきの罪のために刺し通され、私たちの咎のために砕かれた。彼への懲らしめが私たちに平安をもたらし、彼の打ち傷によって、私たちはいやされた。

Tペテロ2:24 そして自分から十字架の上で、私たちの罪をその身に負われました。それは、私たちが罪を離れ、義のために生きるためです。キリストの打ち傷のゆえに、あなたがたは、いやされたのです。

コロサイ4:6 あなたがたのことばが、いつも親切で、塩味のきいたものであるようにしなさい。そうすれば、ひとりひとりに対する答え方がわかります。

Tテモテ4:12 年が若いからといって、だれにも軽く見られないようにしなさい。かえって、ことばにも、態度にも、愛にも、信仰にも、純潔にも信者の模範になりなさい。

エペソ4:29 悪いことばを、いっさい口から出してはいけません。ただ、必要なとき、人の徳を養うのに役立つことばを話し、聞く人に恵みを与えなさい。

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