2019年11月3日「父と母を喜ばせなさい」箴言23:1〜35

序−20年ほど前に出た「人口ピラミッドがひっくりかえる」という本の通り、高齢者の増加と出生率の低下による急速な高齢化は、日本を揺るがす大きな社会問題となっています。それは、社会保障の問題だけでなく、家庭や家族を揺るがす問題ともなっています。今日の箇所から学びましょう。

T−正しく生きることで−24, 19, 15〜16
 多くの高齢者が嫌っていることがあります。子供たちに荷物になることや病気に苦しむことを嫌い、何の楽しみもない暮らしや老化にうんざりしていると言います。老人への虐待や、高齢者の孤独も社会問題となっています。高齢化社会で何が必要なのでしょうか。聖書は、一貫して年老いた親への孝行を命じています。十戒の後半、対人関係の初めに「父と母を敬え」と命じている通りです。出エジプト20:12,エペソ6:2。そして、今日の箇所では、「父と母を喜ばせなさい」と命じています。25節。
 では、どんなことで親を喜ばせるのでしょうか。現代社会では、旅行、プレゼント、食事で喜ばせようとするそうです。聖書ではどうでしょう。まず、子どもが「正しく生きることで親を喜ばせる」ように勧めています。24,19節。知恵をもって、正しい道を歩むことを勧めています。子どもが心に知恵を得て、正しいことを語るなら、親は喜び、踊るというのです。15〜16節。意外ですか。どんな親でも、子どもは正しく育つことを願うものです。自分は正しくなかったけれども、子どもは正しく生きることを望むのが、親の心情というものです。
 子どもに対する親の期待を満たしてあげることで、親孝行ができます。現代社会では、かつては親自身が富と名声を得ることを願い、子どもにもそれを期待していました。しかし、豊かでも社会が混乱し家庭が崩壊して来ると、もっと根源的なことを子どもたちに期待するようになりました。慎ましくても、正しく心豊かに生きることを願うのです。
 19節の「知恵を得て、まっすぐの道を歩む」生き方とは、自制心のある節制した生き方と言えるでしょう。続く20〜21節を見ると、その節制した生き方の具体例が記されています。「大酒飲みや肉をむさぼり食う者と交わるな」というのは、そういう生き方をしないということです。自分を制御できなくて、どうして確かな人生を生きることができるでしょうか。不摂生な生き方は、浪費癖が生じて、怠惰な生活となり、貧しくなります。そのような生活習慣は、不正や罪を犯すようになります。そのように生きれば、親は喜ばず、心配になります。ですから、親は子どもがどんな友達と付き合うか心配するのです。
 混乱し、退廃的になった現代社会は、道徳の必要性が叫ばれ、近年小中学校において教科化されました。しかし、教育関係者自体に道徳の理念が十分に理解されていないそうです。正しい生き方をすることで親を喜ばすことができます。もちろん、博士か大臣かまでは行かずとも、子どもがそれぞれの分野で功なり名を遂げることを親は望むものです。しかし、どんなに成果をあげたとしても、道徳的に問題があれば、両親には喜ばれません。社会的に成功しても、罪を犯すならば、誰が喜ぶでしょう。私たちが御言葉に聞き従うなら、自制の生活をすることができます。Uペテロ1:5〜7。聖霊の導きを受けて、自制のある生活ができるように願います。

U−親に耳を傾け、敬うことで−22,26
 次に、22節を見てください。「親を喜ばせるのは、子どもが親の言うことをよく聞いて、親を敬うこと」です。エペソ6:1の「両親に従いなさい」と訳されている言葉の原語の意味は、両親によく耳を傾けなさいということです。子どもが小さい時は、親の言うことを聞くでしょうが、だんだんと聞かなくなります。やがて世代間のギャップで、会話が少なくなり、家庭を持って、子育てとなれば、いっそう話す機会は少なくなります。
 高齢者の痛みは、病気、貧しさ、空しさ、孤独だと言われます。その中で最も大きな苦痛は孤独です。一緒に楽しかった家庭から、入学、就職、結婚などで、一人二人と子どもたちが離れて行きます。親しかった友人もしだいに交流が途絶え、先に天国へ行きます。長年連れ添った配偶者もいなくなれば、孤独な一人暮らしです。たとえ家族と一緒だとしても、精神的には孤独ということもあります。その暮らしは寂しいのです。
 ですから、年老いた父や母は、子がよく自分の話を聞いてくれることを喜びます。プレゼントや小遣いをくれるというより、子が自分の言うことに耳を傾けてくれることを親は喜ぶのです。年老いた親は、子どもや孫に会い、話をすることを楽しみにしています。話をよく聞くこと自体、親を敬うことになります。子どもが親を認めてくれることを、親は喜びます。「さげすんではならない」というのは、親を尊重し、敬うということです。親の人生を尊重するということは、親を受け止めて、認めて、誇りとするということです。本当の親孝行とは、今日の私にまでしてくれた親を誇りに覚えるかどうかによって決まります。
 親を肯定的に受け止めるためには、親のことを理解する必要があります。時代的背景の違いを理解する必要があります。親の世代が生きて来た社会、文化、経済においても、大きい違いがあります。生活の仕方や価値観も違います。親の世代は、様々な束縛の中で生きて来ました。貧しい家に生まれたり、厳しい家庭で育ったり、幼い頃両親を失ったり、離婚をしたり、病や障害を持ったりする人もいます。環境のために勉強ができず、確かな仕事も持てなかった人もいます。
 子どもの世代から見て、親について理解できない部分が多いです。親たちがしたくなくてしなかったのではなく、できない状況にあったのです。人生を生きてみると、誰にでも困難と苦痛があります。予期せぬ困難な状況が発生します。親たちも、子どもたちが知らない厳しい状況があったのです。子どもにも言えなかったのです。子どもにもっと良くしてあげられなかったという罪悪感の痛みもあります。子どもが困難に会えば、自分のせいではないかと自分を責めます。
 私たちの親たちは、自分が置かれた環境や状況で最善を尽くして来たのです。もし、私たちが親の足りなさや過ちに対して怒りや不満を抱くことがあれば、親たちは、そのような子どもを見て、心の痛みを感じていたことでしょう。親がいて今の自分がいます。そのような親をくださった神様の深い御心を思い、主に感謝しましょう。神様を通して親を理解しましょう。許しましょう。愛しましょう。祝福しましょう。Tテモテ5:8。
 父や母が歩んで来た道を認めてあげてください。26節。親に心を向けてください。親は、子どもの心を求めています。親は偉大な人生を生きて来ました。私を養い、育ててくれたことを感謝します。そう言われれば、どんなにか、親たちは喜ぶことでしょうか。親孝行の最大の例は、イエス様です。いと高き創造主である神の御子でしたが、被造物に過ぎない肉の親を敬いました。両親の権威を認めて、仕えました。ルカ2:51〜52。十字架の苦しみを受ける瞬間まで母マリヤを心配して、母の世話を弟子ヨハネに託しました。ヨハネ19:26〜27。

V−信仰に生きることで−23
 真理に生きることが、父と母を喜ばせます。23節。真理とは何ですか。世のことは、すべて変わりますが、歳月が変わっても変わらないのが真理です。変わらない救いの真理があります。救い主イエス・キリストです。ヘブル13:8。ですから、「親を喜ばせる方法は、変わらぬイエス様の十字架の救いを信じて、信仰に生きること」です。24節の「正しい者」とは、神から与えられた知恵と訓戒と悟りを得て、真理に生きる者のことです。私たちがよく信仰に生きること、それが親孝行になります。
 「告白」で有名なアウグスティヌスは、放蕩と異教崇拝から聖書の神に立ち返り、信仰を持ったことで、泣いて祈っていた母モニカを喜ばせました。親に孝行をしたいと願いますか。親を喜ばせたいですか。信仰に生きてください。信仰の親であれば、あなたがイエス様を信じて、よく信仰生活をして、天国に行くことが、一番の喜びであり、楽しみです。
 信仰のない両親には、必ずイエス様の十字架による救いの福音を伝えてください。福音を伝えることが、最高の親孝行です。まだ主を知らない両親であるなら、必ず伝道してください。罪悪感から解放され、生かされた人生を感謝し、家族が与えられた恵みを思い、天国への希望に生きることができるからです。どれほど充実した幸いな晩年を過ごせることでしょうか。同じ信仰を持っていれば、天国に行っても会うことができます。
 親は、子どもが知恵を得て、生きることを喜びます。24節。知恵の基本は、何でしたか。主を恐れることが、知恵の初め」です。箴言9:10。今日の17節でも、「主をいつも恐れていよ」と命じています。両親を喜ばせるには、神を恐れる信仰を持って、御言葉による知恵を得て生きるようになることです。罪に翻弄されて、知恵のない生き方をするのを見たら、父や母は、どんなに悲しむことでしょう。
 世の中の知恵も必要です。大切です。しかし、世の知恵がなくて、家庭や難しくなることはありません。世の知恵が、どれほど社会を混乱させ、家庭を破壊していることでしょうか。主なる神の存在を認め、永遠の天国の望みを持つ時、本当の知恵を得るのです。御言葉の知恵を得て節制な生活をし、父母を敬い、真実な信仰に生きて親を喜ばすことを願います。



箴言
23:1 あなたが支配者と食事の席に着くときは、あなたの前にある物に、よく注意するがよい。
23:2 あなたが食欲の盛んな人であるなら、あなたののどに短刀を当てよ。
23:3 そのごちそうをほしがってはならない。それはまやかす食物だから。
23:4 富を得ようと苦労してはならない。自分の悟りによって、これをやめよ。
23:5 あなたがこれに目を留めると、それはもうないではないか。富は必ず翼をつけて、鷲のように天へ飛んで行く。
23:6 貪欲な人の食物を食べるな。彼のごちそうをほしがるな。
23:7 彼は、心のうちでは勘定ずくだから。あなたに、「食え、飲め」と言っても、その心はあなたとともにない。
23:8 あなたは、食べた食物を吐き出し、あなたの快いことばをむだにする。
23:9 愚かな者に話しかけるな。彼はあなたの思慮深いことばをさげすむからだ。
23:10 昔からの地境を移してはならない。みなしごの畑に入り込んではならない。
23:11 彼らの贖い主は力強く、あなたに対する彼らの訴えを弁護されるからだ。
23:12 あなたは訓戒に意を用い、知識のことばに耳を傾けよ。
23:13 子どもを懲らすことを差し控えてはならない。むちで打っても、彼は死ぬことはない。
23:14 あなたがむちで彼を打つなら、彼のいのちをよみから救うことができる。
23:15 わが子よ。もし、あなたの心に知恵があれば、私の心も喜び、
23:16 あなたのくちびるが正しいことを語るなら、私の心はおどる。
23:17 あなたは心のうちで罪人をねたんではならない。ただ【主】をいつも恐れていよ。
23:18 確かに終わりがある。あなたの望みは断ち切られることはない。
23:19 わが子よ。よく聞いて、知恵を得、あなたの心に、まっすぐ道を歩ませよ。
23:20 大酒飲みや、肉をむさぼり食う者と交わるな。
23:21 大酒飲みとむさぼり食う者とは貧しくなり、惰眠をむさぼる者は、ぼろをまとうようになるからだ。
23:22 あなたを生んだ父の言うことを聞け。あなたの年老いた母をさげすんではならない。
23:23 真理を買え。それを売ってはならない。知恵と訓戒と悟りも。
23:24 正しい者の父は大いに楽しみ、知恵のある子を生んだ者はその子を喜ぶ。
23:25 あなたの父と母を喜ばせ、あなたを産んだ母を楽しませよ。
23:26 わが子よ。あなたの心をわたしに向けよ。あなたの目は、わたしの道を見守れ。
23:27 遊女は深い穴、見知らぬ女は狭い井戸だから。
23:28 彼女は強盗のように待ち伏せて、人々の間に裏切り者を多くする。
23:29 わざわいのある者はだれか。嘆く者はだれか。争いを好む者はだれか。不平を言う者はだれか。ゆえなく傷を受ける者はだれか。血走った目をしている者はだれか。
23:30 ぶどう酒を飲みふける者、混ぜ合わせた酒の味見をしに行く者だ。
23:31 ぶどう酒が赤く、杯の中で輝き、なめらかにこぼれるとき、それを見てはならない。
23:32 あとでは、これが蛇のようにかみつき、まむしのように刺す。
23:33 あなたの目は、異様な物を見、あなたの心は、ねじれごとをしゃべり、
23:34 海の真ん中で寝ている人のように、帆柱のてっぺんで寝ている人のようになる。
23:35 「私はなぐられたが、痛くなかった。私はたたかれたが、知らなかった。いつ、私はさめるだろうか。もっと飲みたいものだ。」



エペソ 6:1 子どもたちよ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことだからです。
6:2 「あなたの父と母を敬え。」これは第一の戒めであり、約束を伴ったものです。すなわち、
6:3 「そうしたら、あなたはしあわせになり、地上で長生きする」という約束です。

Uペテロ1:5 こういうわけですから、あなたがたは、あらゆる努力をして、信仰には徳を、徳には知識を、
1:6 知識には自制を、自制には忍耐を、忍耐には敬虔を、
1:7 敬虔には兄弟愛を、兄弟愛には愛を加えなさい。

Tテモテ5:8 もしも親族、ことに自分の家族を顧みない人がいるなら、その人は信仰を捨てているのであって、不信者よりも悪いのです。

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