2020年9月13日「暴虐と苦しみの中でも」U列王記11:1〜21

序−人々を苦しめるのが、悪者が大手を振ってやりたい放題、暴虐が行われているのに、裁きが行われないという姿です。そして、自分たちは苦しめられ、痛めつけられているのに、主に叫んでも、救ってくださらないように思えるという姿です。はたして、本当にそうでしょうか。何か忘れている大切なことがあります。

T−暴虐と暗やみ、絶望と苦しみ−1
 今日の舞台は、言わば南ユダ王国の暗黒時代です。イゼベルの上を行く悪女が登場します。1節。このアタルヤとは、アハブとイゼベルの娘で、ユダ王国のヨラムと結婚し、アハズヤ王の母となっていた人です。夫ヨラムは、王になると、弟たちを一人残らず殺してしまいました。U歴代21:4。アタルヤにそそのかされて主を離れて偶像に仕えたので、それを責める弟たちや家来を殺してしまったのでしょう。
 また、王となった息子アハズヤは、北イスラエルのエフーの謀反に巻き込まれて殺されてしまいました。そして、それを知ったアタルヤは、残っていた王の一族、つまり孫たちをことごとく滅ぼしてしまいました。1節。こんなお祖母ちゃんがいるのでしょうか。獣のような所業です。孫たちを王に担ぐ者たちに殺されるのではないかと恐れたのか、王になって権力を握ろうとしたか。ユダ王国の国王となりました。
 こうして、自ら王となったアタルヤの時世、権力はアタルヤ一人が握り、偶像バアル礼拝が強制され、やりたい放題です。詩篇73篇やハバクク1章のような悪者の謳歌する状況です。人々が苦労しているのに、なぜ悪者は栄えているのか。それを思って苦しみます。詩篇73:3,16。私たちも社会を見ながら、詩篇73篇の詩人や預言者ハバククのように嘆くことがあるでしょう。人間関係や仕事の重荷、理不尽な扱いを受けて、「主よ、私が助けを求めて叫んでいますのに、あなたはいつまで、聞いてくださらないのですか。なぜ、あなたは私に、わざわいを見させ、労苦をながめておられるのですか」と叫ぶ時があるでしょう。ハバクク1:2〜3。でも、本当にそうでしょうか。
 主は、ダビデの子孫が続いて王となると約束されました。Uサムエル7:16。その家系から救い主が誕生することになります。マタイ1:1。「王の一族」をことごとく滅ぼすということは、イエス・キリストを送る神のご計画を倒すことになります。ですから、アタルヤの後ろには、サタンがいます。サタンがアタルヤを使って、主のご計画を妨害しようとしたのです。
 主なる神様は、約束を違える方ではありません。ご計画を変える方でもありません。ですから、私たちを救われた神は、私たちがどのような状況にあっても、たとえ暴虐や暗やみ、絶望と苦しみの中でも、私たちを愛し、守り、導いてくださる救いの約束は変わりません。「いつまでも聞いてくださらない、救ってくださらない、私にわざわいを見させ、労苦をながめておられる」と思わせるのが、サタンのやり方です。
 騙されてはなりません。神の統治を忘れてはなりません。創造の時からご計画をもって世を治めておられます。主がイエス様を世に送られて、救いをなされることを妨害しようとするサタンは、イエス様を信じる者が、状況や環境の変化によって、痛み、苦しみ、絶望するようにさせるのです。救いの恵みと祝福を享受して、御国に入ることをサタンは妨害しているのです。惑わされてはなりません。
 さあ、ダビデ王統は断絶し、救い主は来られなくなるのでしょうか。主の統治、見えざる神の御手は、どうあらわれるのでしょう。

U−主の統治、見えざる神の御手−2〜16
 主は、ダビデ王の子孫のともしびを決して消さない、救い主イエス・キリストが来られるまで、ダビデの子孫はつながると約束されました。U列王8:19。今、ダビデにつながる王の一族はことごとく滅ぼされてしまいました。いったいどうして約束は守られるのでしょう。しかし、王の一族がことごとく滅ぼされる事件の最中、驚くべきことが起こりました。2〜3節。何と、赤ちゃん一人、アハズヤの子ヨアシュがその乳母とともに保護され、神殿の布団部屋に隠され、人知れず育てられたというのです。歴史を主管し、統治されている神が働いたことです。
 虐殺の嵐の中、それを成し遂げたのが、ヨラム王の娘、アハズヤの姉妹のエホシェバです。アハズヤの妹と言っても、祭司エホヤダの妻となっているので、アタルヤの娘ではなく、他の后の子でしょう。U歴代22:11。このような信仰の人が王宮にいたので、この女性の機転により王統は守られました。主なる神は、ご自分の約束に忠実です。アタルヤが一族をことごとく滅ぼす最中でも、エホシェバを通して神の御手が働き、守ってくれました。たった一人残された赤ちゃんを、その叔母は命懸けで助け出してくれたのです。ですから、どれほど難しくて大変な状況であったとしても、信仰に生きる者には、主が道を開いてくださるのです。
 6年間待って、その時が来ました。4〜8節。7年目に祭司エホヤダは、近衛兵の百人隊長たちを主の宮に来させ、契約を結び、主の前で誓いをさせました。アハズヤ王の子を見せました。主の宮にあったダビデ王の槍と盾を百人隊長に与えて、ヨアシュを守る任務に就かせたのです。そして、人々の前に王の子ヨアシュを連れ出し、彼に王冠をかぶらせました。人々は、皆「王様、ばんざい」と叫びました。9〜12節。アタルヤは捕らえられ、殺され、ダビデ王家は、6年で復興しました。16節。
 ダビデ王統は断絶したと思い、暗い心でアタルヤの苛政の中で絶望していた人々はみな喜びました。14節。聖徒たちも、人間関係や仕事の重荷、理不尽な扱いを受けて、苦しみや絶望していたとしても、時が来て癒され、喜ぶ時がやって来ます。73編の詩人が、悪者も永遠には栄えないと気付いたのは、神の聖所に入った時でした。詩篇73:17〜20。辛い状況で嘆き悲しむ時、苦しんで、獣のように嘆く時、主の前に出ましょう。
 ヨアシュ保護は、神の導きがなければ不可能なことです。6年間秘密が守られ、ヨアシュを育てることができたのは、ご自分の契約を守る神が保護されたからです。神の驚くべき摂理と統治が、アタルヤを除き、幼いヨアシュを王に立ててくださいました。そうです。イエス様を信じる私たちも、神様の統治と守りの中にあります。必ず暗やみと苦しみの中から助け出されます。エホシェバやエホヤダのように、助けてくれる人を起こしてくださいます。神があなたの味方なのですから。ローマ8:31。

V−新しい出発−17〜21
 7歳の王は、国政を実行することができません。ですから、祭司エホヤダが国政を助けました。祭司エホヤダの助けを借りて、ユダを統治するヨアシュ王の時代の様子です。20節。「人々はみな喜び、この町は平穏であった」と記録されています。アタルヤの暴政の時代は、苦しくて不安でならなかったが、ヨアシュ王の時代は、民に喜びと希望を与えました。私たちの人生と家庭も、そのように喜びと平穏であることを願います。しかし、どうすれば喜びと平穏な人生を享受することができるのでしょうか。
 17節を見ると、エホヤダは、主と王と民との間で、主の民となるという契約を結び、王と民との間でも契約を結びました。エホヤダは、信仰改革をしながら、王と民が神と契約をするようにしました。神の御言葉の通り国を治め、御言葉通りに従い、神の民になるという契約です。皆が神の民となって信仰に生きれば、神様の恵みと祝福をともに受けることができます。主の前に生きることが自己中心や罪の支配から守られます。
 神の民とは、神の契約を信頼して、主に拠り頼んで生きていく者です。私たちが環境の悪化、状況の厳しさの中で、恐れ不安に思っている時は、主の約束を信頼していませんでした。御言葉に拠り頼んでいなかったのです。サタンは、主の契約を妨害しようとします。主を疑わせ、御言葉に拠り頼ませないようにさせます。暴虐や暗やみの中でも、主を信頼してください。主の約束に拠り頼んでください。
 ひょっとしたら、主を信頼せず、約束に拠り頼まないことが、主の契約の妨害になっているのではないでしょうか。神の仕事を妨害しているとは考えないで、ただ自分の思い通りになることにのみ心を集中している。そのために、主の導きや御言葉に聞き従わず、神の働きを妨害しているのです。アタルヤのように権力と財力を手中にし、やりたい放題できたとしも、孫を殺し、一族を皆殺しにしたアタルヤにどんな喜びと平穏がありますか。
 18節を見ると、バアルの祭壇と像を徹底的に打ち砕き、取り除いています。ユダの人々は、神殿で主なる神を礼拝していながら、バアルも拝んでいました。アタルヤの支配と影響の中にいたからです。私たちも、暴虐と貪欲の横行する社会で生きています。ですから、私たちも悪影響を受けています。私たちの心の中にある罪と偶像を取り除かなければなりません。民は偶像を取り除いたから、喜びと平穏が回復したのです。
 悪人が支配する現実の中で、神の約束を信じて生きることは愚かに見えるでしょう。しかし、やがて神が約束された御言葉を信じて生きていく人生が最も幸いな人生だという事実が明らかになります。私たちにも、そういう日が臨むということを今日の箇所が教えてくれました。ですから、たとえ暴虐と暗やみの中を歩もうとも、私たちは、主と御言葉を信頼して生きて行きます。詩篇73:21〜23。



U列王記11:1 アハズヤの母アタルヤは、自分の子が死んだと知ると、ただちに王の一族をことごとく滅ぼした。
11:2 しかし、ヨラム王の娘で、アハズヤの姉妹のエホシェバが、殺される王の子たちの中から、アハズヤの子ヨアシュを盗み出し、彼とそのうばとを寝具をしまう小部屋に入れて、彼をアタルヤから隠した。それで、彼は殺されなかった。
11:3 こうして、彼はうばとともに、【主】の宮に六年間、身を隠していた。その間、アタルヤがこの国の王であった。
11:4 その第七年目に、エホヤダは使いを遣わして、カリ人、近衛兵の百人隊の長たちを【主】の宮の自分のもとに連れて来させ、彼らと契約を結び、【主】の宮で彼らに誓いを立てさせ、彼らに王の子を見せた。

11:12 こうしてエホヤダは、王の子を連れ出し、彼に王冠をかぶらせ、さとしの書を渡した。彼らは彼を王と宣言した。そして、彼に油をそそぎ、手をたたいて、「王さま。ばんざい」と叫んだ。
11:13 アタルヤは近衛兵と民の声を聞いて、【主】の宮の民のところに行った。
11:14 見ると、なんと、王が定めのとおりに、柱のそばに立っていた。王のかたわらに、隊長たちやラッパ手たちがいた。一般の人々がみな喜んでラッパを吹き鳴らしていた。アタルヤは自分の衣服を引き裂き、「謀反だ。謀反だ」と叫んだ。
11:15 すると、祭司エホヤダは、部隊をゆだねられた百人隊の長たちに命じて言った。「この女を列の間から連れ出せ。この女に従って来る者は剣で殺せ。」祭司が「この女は【主】の宮で殺されてはならない」と言ったからである。
11:16 彼らは彼女を取り押さえた。彼女が馬の出入口を通って、王宮に着くと、彼女はそこで殺された。
11:17 エホヤダは、【主】と王と民との間で、【主】の民となるという契約を結び、王と民との間でも契約を結んだ。
11:18 一般の人々はみなバアルの宮に行って、それを取りこわし、その祭壇とその像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。祭司エホヤダは、【主】の宮の管理を定めた。
11:19 彼は百人隊の長たち、カリ人、近衛兵たちとすべての一般の人々を率いた。彼らは王を【主】の宮から連れ下り、近衛兵の門を通って、王宮に入った。彼は王を王座に着けた。
11:20 一般の人々はみな喜び、この町は平穏であった。彼らはアタルヤを王宮で剣にかけて殺したからである。
11:21 ヨアシュは七歳で王となった。



詩篇73:2 しかし、私自身は、この足がたわみそうで、私の歩みは、すべるばかりだった。
73:3 それは、私が誇り高ぶる者をねたみ、悪者の栄えるのを見たからである。

詩篇73:16 私は、これを知ろうと思い巡らしたが、それは、私の目には、苦役であった。
73:17 私は、神の聖所に入り、ついに、彼らの最後を悟った。
73:18 まことに、あなたは彼らをすべりやすい所に置き、彼らを滅びに突き落とされます。
73:19 まことに、彼らは、またたくまに滅ぼされ、突然の恐怖で滅ぼし尽くされましょう。
73:20 目ざめの夢のように、主よ、あなたは、奮い立つとき、彼らの姿をさげすまれましょう。
73:21 私の心が苦しみ、私の内なる思いが突き刺されたとき、
73:22 私は、愚かで、わきまえもなく、あなたの前で獣のようでした。
73:23 しかし私は絶えずあなたとともにいました。あなたは私の右の手をしっかりつかまえられました。

ハバクク1:2 【主】よ。私が助けを求めて叫んでいますのに、あなたはいつまで、聞いてくださらないのですか。私が「暴虐」とあなたに叫んでいますのに、あなたは救ってくださらないのですか。
1:3 なぜ、あなたは私に、わざわいを見させ、労苦をながめておられるのですか。暴行と暴虐は私の前にあり、闘争があり、争いが起こっています。
1:4 それゆえ、律法は眠り、さばきはいつまでも行われません。悪者が正しい人を取り囲み、さばきが曲げて行われています。

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