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<帰納法的聖書研究>

 

 小グループや養育・弟子訓練クラスで聖書勉強を行なう方法は、必ずしも一つとは限りません。
しかし、今日まで理論的・経験的に一番効果的な方法として証明されているものは、いわゆる帰納的なアプローチです。
弟子訓練のテキストも、この方法によって作られていることが多いのです。この方法には、これまでの教育方法を揺り
動かすだけの独特の要素が含まれています。帰納的聖書の学び方に関する基本について考えてみましょう

                        

「帰納法とは何か」
 

帰納法とは論理学の言葉です。一つ一つの基本的なことから、結論に至ることです。その反対は演繹法と言います。
結論を先に証明します。

 帰納法とは、医者の診断のようなもので、症状を見て、それから総合して診断をするようなものです。
主題講義を通して聖書を学ぶことが演繹法的であり、小グループで御言葉を開きながら教えられていることを発見し、
適用に導かれることが帰納法的と言えるでしょう。

 帰納的方法によって聖書研究をする目的は、人格的神様を理解し、神様を真実に思い、神様に全面的に従うことです。
究極的には、イエス様に似る者となることです。

 説教を通して教育することも大切です。しかし、一方的に御言葉を聞くだけでなく、聖徒たち一人一人が御言葉に
直接あたるようにしなければなりません。

 聖書の学びには両面性があります。

例:使徒17:11「ここのユダヤ人は、テサロニケにいる者たちよりも良い人たちで、非常に熱心にみことばを聞き、はたしてそのとおりかどうかと毎日聖書を調べた。

 

「帰納的方法と演繹的方法との違い」

 

    演繹的

    帰納的

  リーダー中心

  メンバー中心

  証明の理論

  発見の理論

  一方的な対話

  双方的対話

  知識伝達

  主に人格変化

  適用が弱い

  適用に有利

 

「帰納的な方法の長所」

 

A みことばの権威を認定します。
 
 知識のある人たちが御言葉の権威に跪く場合があります。帰納法的に聖書を学ぶことを通して、
聖書を批判的に見ていた人が、聖書に具体的な導きを求めるようになります。

B 自分で勉強できるという自信を持ちます。

 自ら御言葉を学べることの喜びや自信を持ちます。簡単な教材を通して御言葉に取り組み、自ら教えや導きを発見する
ことができるからです。

C 訓練上重要な手段となります。

 御言葉による訓練を受ける時、帰納的に学ぶことで自然に御言葉によって訓練されるようになります。

D みことばをやさしく受け入れます。

 牧師が御言葉を伝えても、「先生がそう言っても」と言って聞こうとしない人も、自分で学んで心に御言葉が入ると、
素直に御言葉に聴き従うようになります。

E 霊的な変化の体験が早いです。

 信徒同士で話しながら御言葉について学び、そこから悟ることは、説教を通して悟るよりも変化が早いです。御言葉を
自ら悟ることで、早いうちに霊的変化を経験するようになります。

F 聖書勉強への意欲を刺激させます。

 聖書の勉強が楽しくなります。帰納的方法で聖書の勉強をしたくなります。説教も良く傾聴するようになります。

 

 

「帰納的方法へのアプローチ」

 

A 観察/ 何を見るか。例:「何と言っていますか」

 観察の原則:一般的なことから具体的なことへ 全体から部分へ

 観察を通して材料を集めます。そして、問題は何かを考えます。一般的なことから具体的なことへと進んで行きます。
例:スカルの井戸の女。水が
12回出て来ます。水に対する関心を呼び起こさせ、結局は永遠の水、泉であるイエス様を
紹介します。

 聖書の言葉を自分の言葉に書き換えさせます。本文を再編成させて、御言葉の中心を把握させるのに高価があります。
聖書を読むだけでなく、自分の言葉で文化に合わせて、境遇に合わせて捉え直させます。

 まず観察してみます。様々なことに気付きます。いろいろなことが見えて来ます。 他の人の観察を聞いてみると、
刺激を受けます。自分の足りなさも分かって来ます。

 

B 解釈/何を意味するか。例:「それは、どういう意味でしょう」

 「意味」とは、自分の主観的な考えを本文の中に注ぎ込むことによって得るものではなく、神様の客観的な真理の
御言葉を本文の中から読み取るものです。聖書を研究する作業は、神様を求めつつ神様の御思いを熟考してみることです。

 観察したことについて、何を意味するのか、書いた人の意図は何か、この箇所の構造は何を表しているのか、そういう
ことについて発見します。観察するだけでは駄目です。一つの文字に注目し、単語に注意します。一つの単語を繰り返し
使うのは何か意味があるのではないか、というように考えます。時には、牧師が想像もつかないような霊的に素晴らしい
解釈を信徒がする場合もあります。信徒が悟り、牧師も悟ります。メンバーが成長すれば、リーダーも成長します。

 どんな類型の文章なのか把握すると解釈が進みます。例:詩、歴史、喩え、手紙、箴言等。文章の脈絡を知ると理解が
深まります。

 

C 反応/何を感じるか。例:「あなたはどう思いますか」

 その話にお互いに何を感じたか分かち合います。また御言葉を読んだ人の態度にも反応はあらわれます。はじめは、一般的原理や常識から出発します。しかし、誰かは、ある御言葉によって確かな必要を感じるというようなことが起こります。「他の人はこう思っていますが、あなたはどう思いますか」「あなたはこの御言葉をどう思いますか」と聞くと、その人がそのことを肯定しているか否定しているかが分かります。

 反応質問は、誰にとっても答え易いものです。解釈質問は答えは決まっていますが、反応質問の答えはそれぞれです。思う、感じることは、その人のものだからです。ですから、否定されるものではありません。反応質問の場合は、その人の答えがそれぞれ正解なのです。

 

D 適用/どのように影響を与えるか。例:「あなたはどう応えますか」

 私はどう応答して行くか、ということです。知っていて使わなければ、知っていないのと同じです。聖書は知識を与えてくれるのではなく、私たちの変化を求めているのです。私たちの応答を求めているのです。

 聖書の御言葉が、自分に「どうしなさい」と言っているのかを確かめます。神の御言葉への従順を求められています。帰納的聖書の学びの中心は、従順にあります。いくら悟っても討論しても、従って行かなければ、何にもなりません。多くの信徒たちがこの病に陥っています。説教を聞いても頭でっかちなってしまいます。同じことを繰り返し、成長がありません。帰納的聖書研究法とは、変化と成長を目指します。

 

「質問の種類を把握してテキストを用いる」

小グループでの聖書の学びに用いられるテキストは、「観察、解釈、反応、適用」という帰納的聖書研究の特性にしたがって作られています。ですから、テキストの中に出て来るそれぞれの質問も、観察、解釈、反応、適用という特性に基づいて分類することができます。このように、質問を4種類に分類し、把握することは、帰納的聖書研究を導く上で非常に重要です。

 聖書本文について尋ねている質問ならば、観察、あるいは解釈の質問として分類されます。聖書本文の事実や要約について聞いている質問ならば観察質問、また聖書の意味や教訓について聞いている質問ならば、解釈質問として分類します。

 メンバーの生活について尋ねている質問ならば、反応質問、あるいは適用質問として分類されます。ここで、メンバーの過去と現実(反省と自己分析)に関して聞いているならば反応質問、メンバーの生活の変化(適用と決断)について尋ねている質問ならば適用質問として分類されます。

 質問の中には、観察、解釈、反応、適用の二つ以上の領域に関わっている質問もあります。

 

「補助質問」

 帰納的聖書研究を導くリーダーは、テキストに書かれている主質問のほかに、補助質問を巧みに活用することによって、メンバーをいっそう深い理解と応答へと導くことが求められます。予習する時に、必要と思われる補助質問を準備します。小グループでのバイブルスタディーの時でも、流れで必要と思われたら、補助質問をするようにします。

 

「適応質問についての具体化、実行化」

A.「祈りたいと思います」→Q.「何について祈りますか」

A.「誰かと一緒に祈りたい」→Q.「誰と祈りますか」

 具体的に質問して行きます。適応が生活に具体的にできるか、確認します。しかし、初信者には、「何について祈りますか」くらいにしておきます。できない自分を責めることになるからです。助けてあげる例:「聖書を読みます」という適応は、そのままにすれば、読まないで終わってしまいます。「じゃ、どこを読みますか。」と質問して、できないところをできるように手助けして行きます。

 

「準備」 (小グループ参観プリントを用いて)

質問を分解してみましょう。(観察、解釈、反応、適用)自分で質問に答えてみましょう。一つの中に二つ以上の質問が入っている場合があります。それを分解して質問します。 必要だと思われる質問を加え、省いてもよいと思われる質問を除いてもよいでしょう。しっかり準備しても、小グループでは、白紙の状態で臨み、御霊の導きに従いましょう。