2012年6月17日「神が人々を用いられて」イザヤ23:1-18
序−古代フェニキヤ人は、地中海世界を隅々まで往来し、海洋貿易で栄えた民族です。彼らの中心の都市国家が、今日のレバノンにあったツロです。彼らは、海洋貿易によって、巨万の富を得ていました。そのようなツロの滅亡からメッセージを受けます。
T−貿易の利益で栄えたツロの滅び−1-7
タルシュシュから帰って来る商船に、ツロの滅亡の情報が入ります。1節。タルシュシュとは、スペインにあったツロの植民地であり、途中キプロス島にあったツロの植民地キティムを経由します。使徒21:3。ツロの影響力は、地中海全体に広がっていました。2-3節。「海辺の住民」というのも、アフリカ北岸の植民都市です。代表的な都市が、ローマと地中海の覇権を争い、ポエニ戦争の勇将ハンニバルで有名なカルタゴです。
地中海中に影響力を持っていたツロのフェニキヤ人とは、古くから大きな船で海に出て、地中海貿易で栄えた民族でした。その貿易によって、様々な物資が地中海の隅々まで行き渡り、地中海諸国が恩恵を受けていました。しかし、問題もありました。それは、貿易による利益というより暴利です。いつの時代も貿易の覇権を手にした国や都市が栄えています。商品価格とは、競争相手がいなくて、需要が多ければ、値段は思いのままです。巨万の富を手にした彼らにとって、お金がすべてでした。貿易の拠点のために、地中海のあちこちに殖民都市を作りました。お金があれば、なんでもできると豪語していたのです。現代経済人と同じ価値観です。
ツロに帰って来る船は、途中でツロの滅亡の知らせを聞いて驚きます。植民都市も、衝撃を受け、エジプトなど取引相手の国々も驚きました。5-6節。ツロの近くにあった同じフェニキヤ人の都市シドンも滅びます。4節。「海」も「海のとりで」も、港湾城塞都市ツロのことです。海に面した城塞なので、滅びるとは考えられませんでした。しかし、「子を産まない、若者を育てない」と言うように、戦争で次世代を失ってしまいます。
アッシリヤという強大国は、軍事力で他国を侵略し、支配しますが、ツロは、経済力で、地中海世界を支配して行ったのです。日本をはじめとして現代は多くの国が貿易で立っています。この古代の海洋国家は、現代貿易立国の姿とあまりにも似ています。世界中に進出し、あらゆる国と取引し、富の追及に奔走します。現代は、武力ではなく、経済戦争をしているようです。富のために、自然も社会も人間性さえもすべてが犠牲にされています。ツロのその価値観が滅びを招きます。富を求めたアッシリヤに滅ぼされてしまいます。
U−エルサレム憧れだったツロの滅び−8-12
ツロは、イスラエルに近く、古くから関係がありました。エルサレムは、内陸にあり、外に対して閉じられている都市でした。それに比べると、ツロは開かれた都市です。ツロは世界とつながっていました。そのために、エルサレムは、ツロに対して憧れを持っていました。ツロの商人は、ただの商売人ではありません。植民地の王や長官は、ツロの商人でした。彼らは、世では尊ばれていました。8節。日本でも、戦国時代の堺は、商人が治めていた都市でした。戦国大名と対等に渡り合っていました。私たちは、世の何をうらやましがるのでしょうか。
ところが、そのようなツロを神様はどう見られ、どうされるのでしょうか。7,9節。世の権力と富は砂上の楼閣だと見られます。富や権力を積み重ねても、やがては崩れてしまうからです。貿易で栄華を極めたツロの滅亡、それは、取引先や植民地に深刻な打撃を与えることになります。神の民は、世をうらやましがってはならない、むしろ、エルサレムこそ世からうらやましがられる存在だと教えているのです。御言葉のあるところは、神様の宝を積み上げているところです。その宝が世に流れて行くところなのです。どんなに良いところでしょうか。今も神の民が、世のものをうらやましがっています。社会的地位や高収入、力や美貌などを羨むのでしょうか。
そのような価値観では、世も教会も共に滅びてしまいます。教会は何のために存在しているのでしょうか。そのような世を変え、神の前に真実に生きる道を示す存在ではありませんか。エルサレムが生きる道は、世をうらやましがらないことです。それらは、滅びるのです。私たちは神様の祝福を受け、御言葉の宝を持っている尊い存在です。イザヤ43:4。
ツロが滅ぶことで、タルシュシュら植民地の繁栄は続かず、廃れて行きます。10-12節。ツロの植民地も、ツロという中心を失えば、繁栄を続けることはできません。その時代は アッシリヤ隆盛の時代、手向かった強国バビロンがずたずたにされました。そのようにフェニキヤの植民地の「とりで」ツロも滅ばされるというのです。13-14節。それは、海洋貿易の根を絶つためでした。
なぜツロの滅びが繰り返し言われているのでしょう。エルサレムに何の関係があるのでしょう。神の民が、ツロをうらやましがり、ツロのようになろうとするからです。世をうらやましがり、世の人々に似て行こうとするからです。彼らが海の男で、全世界をまたにかけて、見たいものを見て、食べたいものを食べているからです。大変魅力的でした。
エルサレムの人々は、ユダの山地から出たことはありません。ダビデ、ソロモンの栄華は過去のことです。神様は、そんなエルサレムにツロの滅亡を見させて、うらやましがるなと警告されるのです。箴言3:31。隣の芝生は青いのです。世のものをうらやましがればするほど、空しくなります。エルサレムには、いつも御言葉の宝が注がれ、神の恵みがあふれています。「満ち足りる」ことは素晴らしい信仰の生き方です。Tテモテ6:6。私たちにとって、それは教会です。神様を離れては、栄光も平安もありません。
V−ツロのように世の人々が用いられる−15-18
ところが、驚くことに70年後にはツロは回復するというのです。15-16節。忘れられた遊女が思い出してもらう歌のように、忘れられかけたツロが70年後に復活するというのです。それは、人気の高い遊女が宴席に呼ばれなくなっても、町々を流しながら生き続けた様に、ツロやタルシュシュから追われても、他のところで商売を続けて、回復するというのです。イエス様の十字架の死と復活によって救われた私たちは、ツロのような回復の恵みに浴することができます。私たちは、挫折や失敗で終わることはありません。黙示録20:6。勝利が約束されています。ヨハネ16:33。
この後の節も遊女の譬え続きます。17-18節。遊女の報酬も仕事も貿易とその利益を譬えています。再起したツロは、様々な王国との取引で得た利益を以前のように自分のためにだけ使うのではなく、主にささげたというのです。以前のように権力や財力のために蓄積することはしなかったというのです。ツロは、ツロの再起は、「主はツロを省みられる」結果だからです。ここに私たちの生き方、これからの日本の生き方が示唆されています。神を恐れて、誠実に働き、社会と人々の生活を優先するのです。
ツロは、エルサレムとの長い関係がありました。ですから、滅亡から回復した時、真の神様を恐れる心を持つようになって、人間らしさを取り戻しました。収益の相当な部分をエルサレムにささげるようになったのです。神の憐れみと恵みに応える姿です。こうして、エルサレムの人々を助ける道具として、ツロが用いられるようになりました。一般恩寵というように、世の人々も神様の恩恵を受けています。ですから、教会やクリスチャンのために、人々も用いられるのです。
用いられることは、もっと他にあります。ツロの人々によって、福音が全世界に拡散することにもなります。地中海世界で人々がまず接する外国人は、商人たちです。商人はどこにでも出かけるからです。ツロの商人が全世界に行き巡りながら、持っている情報を現地の人々に伝えます。唯一の情報と言ってもよいでしょう。彼らのよく知っているエルサレムのことやその神様のことも伝えられます。福音が伝えられる場合、商人たちの開拓した道や情報は、助けとなります。開国された日本にも、敗戦後の日本にも、いち早く宣教師が入って来ました。
こうして、商人たちの仕事や富が神様の国のために用いられるようになりました。道具として使われたということです。神様は、世の人々を用いて私たちを助けてくださいます。福音の拡散のためにも、世の人々を使われます。昔商人たちが情報を伝えたように、今は、近隣や友人、職場や学校の人々を用いて、教会やクリスチャンの情報を伝えてくれるのです。私たちが接するあらゆる人々から、教会や信仰のことがその関わる人々へ伝えらます。ですから、人々との関係を大切にしなければなりません。
私たちは、ツロのことを通して学ぶことは、人をうらやんではならないということです。私たちは、イエス様の救いによって、罪の赦しと天国への命をいただき、御言葉の糧と神様の祝福と導きを受けています。世が教会とクリスチャンをうらやむのです。世の人々が羨むように証ししなければなりません。そして、神様が世の人々を用いて私たちを助けてくださり、世の人々を用いて、福音を広めてくださることを覚えなければなりません。神様は、一般恩寵を与え、刈り取りもされます。そのためにも、私たちは、会う人ごとに一期一会の思いで大切に良い証ししなければ、と思わされます。そして、人間関係のある様々な人々と、良い関係を作らなければと心新たにして、世に出て行きます。
イザヤ
23:1 ツロに対する宣告。タルシシュの船よ。泣きわめけ。ツロは荒らされて、家も港もなくなった、とキティムの地から、彼らに示されたのだ。
イザヤ
23:2 海辺の住民よ。黙せ。海を渡るシドンの商人はあなたを富ませていた。
23:3 大海によって、シホルの穀物、ナイルの刈り入れがあなたの収穫となり、あなたは諸国と商いをしていた。
23:4 シドンよ、恥を見よ、と海が言う。海のとりでがこう言っている。「私は産みの苦しみをせず、子を産まず、若い男を育てず、若い女を養ったこともない。」
23:5 エジプトがこのツロのうわさを聞いたなら、ひどく苦しもう。
23:6 海辺の住民よ。タルシシュへ渡り、泣きわめけ。
23:7 これが、あなたがたのおごった町なのか。その起こりは古く、その足を遠くに運んで移住したものを。
23:8 だれが、王冠をいただくツロに対してこれを計ったのか。その商人は君主たち、そのあきゅうどは世界で最も尊ばれていたのに。
23:9 万軍の主がそれを計り、すべての麗しい誇りを汚し、すべて世界で最も尊ばれている者を卑しめられた。
23:10 タルシシュの娘よ。ナイル川のように、自分の国にあふれよ。だが、もうこれを制する者がいない。
23:11 主は御手を海の上に伸ばし、王国をおののかせた。主は命令を下してカナンのとりでを滅ぼした。
23:12 そして仰せられた。「もう二度とこおどりして喜ぶな。しいたげられたおとめ、シドンの娘よ。立ってキティムに渡れ。そこでもあなたは休めない。」
23:13 見よカルデヤ人の国を。――この民はもういない。アッシリヤ人がこれを荒野の獣の住む所にした。――彼らは、やぐらを立てて、その宮殿をかすめ、そこを廃墟にした。
23:14 タルシシュの船よ。泣きわめけ。あなたがたのとりでが荒らされたからだ。
23:15 その日になると、ツロは、ひとりの王の年代の七十年の間忘れられる。七十年が終わって、ツロは遊女の歌のようになる。
23:16 「立琴を取り、町を巡れ、忘れられた遊女よ。うまくひけ、もっと歌え、思い出してもらうために。」
23:17 七十年がたつと、主はツロを顧みられるので、彼女は再び遊女の報酬を得、地のすべての王国と淫行を行なう。
23:18 その儲け、遊女の報酬は、主にささげられ、それはたくわえられず、積み立てられない。その儲けは、主の前に住む者たちが、飽きるほど食べ、上等の着物を着るためのものとなるからだ。
イザヤ43:4 わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。だからわたしは人をあなたの代わりにし、国民をあなたのいのちの代わりにするのだ。
箴言3:31 暴虐の者をうらやむな。そのすべての道を選ぶな。
Tテモテ6:6 しかし、満ち足りる心を伴う敬虔こそ、大きな利益を受ける道です。
ヨハネ16:33 わたしがこれらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を持つためです。あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。
出エジプト20:17 あなたの隣人の家を欲しがってはならない。すなわち隣人の妻、あるいは、その男奴隷、女奴隷、牛、ろば、すべてあなたの隣人のものを、欲しがってはならない。