2025年12月7日「国民が分かれ出た」創世記10:1〜32

序−創世記を9章のノアの洪水まで読んで来た人が、11章のバベルの塔へスキップすることが多いです。しかし、10章に記された系図にも意味があります。5章の系図は、祖父、父、自分、子、孫と縦に続くような直系ですが、10章の系図は、兄弟から兄弟の子、また兄弟に戻ってその子と横に広がる傍系を含みまです。ノアから分かれ出た諸氏族が記されています。

T−分かれ出た−1〜5,20,31〜32
 洪水が終わった時、神は、ノアの家族を祝福し、「生めよ。増えよ。地に満ちよ」と言われました。9:1。ですから、この系図は、ノアから新しく人々が増え広がっていくことが示されています。1節。ノアの家族から「もろもろの国民が地上に分かれ出た」ことが記されている系図です。32節。大洪水の後、人類はどのように世界中に広がり、古代の民族が形成されて行ったかを示しています。そうは言っても、現代の言語や民族と一致しているわけではありません。そして、この系図が人種の起源を伝えるために記されたものでもありません。
 この系図には、ノアの3人の息子の子孫である家系、氏族、国民の名前が70挙げられています。ヤペテから14、ハムから30、セムから26が広がっています。神が国々に相続地を持たせ、人々に割り当てられ、その堺を定められたのです。申命記32:8。氏族、国民の合計70は、聖書的な総数概念の数ですから、これをもって全世界としたのでしょう。そこには、古代中近東の実際の地名や民族名が多く含まれています。神が広がるようにされたのですから、人間は、どの民族であれ創造者である神と密接な関係があるのだということです。使徒17:26〜27。
 この系図の特徴は、それぞれ言語ごとにその氏族にしたがって、国民が分かれ出たことです。5,25,32節。「多くの国民に分かれ出た」という表現が繰り返されされています。ノアから増え広がって、多くの国民に分かれ出たことが強調されています。18節。神の御心が「生めよ。増えよ。地に満ちよ」にあったからです。9:1。それが神の祝福でした。広がって行くので、やがて世界中の言語が異なり、民族が異なり、地域が異なり、国が異なるようになりました。5,20,21節。でも、もとは繋がっていたということです。32節。違いのために争ってはならないのです。家族もそうです。
 はじめに記されているのが、ヤフェテの子孫です。2〜5節。ヤフェテは、その氏族名、地域名をみると、小アジアやヨーロッパ、黒海やカスピ海沿岸に広がったようです。ヤワンはギリシア人、マダイはペルシア人、ヨナ書に出て来るタルシシュはスペインと言われています。確かに、言語系統的には、インド・ヨーロッパ語族にあたるようです。9:27で「ヤフェテを広げ」と言われたように、アジアからヨーロッパ、そしてアメリカ大陸まで広がって行きます。

U−神に反抗する罪の性質−6〜20
 次に記されているのが、ハムの子孫です。6〜20節。その氏族名を見ると、アフリカ北部やメソポタミア南部に広がったようです。地名としては、ミツライムはエジプト、クシュはその南のエチオピア、カナンはパレスチナになります。イスラエルの周りの国民、民族の名が多く見られます。後に神の民と関係があることから、ハムの子孫について最も多く記されているということでしょう。
 ハムは、父の恥を覆うことなく、吹聴した人です。9:22。その罪の性質は色濃くその子カナンとその子孫に引き継がれて行きます。その中で、特にニムロデについて取り上げ、詳しく記されています。8〜12節。ニムロデは、「地上で最初の勇士」、「主の前に力ある狩人」と紹介されています。何か良い印象を受けるかもしれませんが、ニムロデという名は、「神に反抗する」という意味です。
 古代の王たちは、狩りを楽しみました。古代の王や高官たちが狩りを楽しんだのは、戦争のための訓練でした。ですから、ニムロデが「狩人」と紹介されているのは、残酷な戦争を好む人だったということです。ニムロデは、戦争を通して自分の欲望を成し遂げた人でした。かつてカインの子孫が暴力で世を支配しましたが、洪水で裁かれた後もニムロデによって、洪水以前のようになってしまいました。現代社会も、権力や欲望が支配しています。信仰と知恵をもって生きることが必要です。
 この名前は、その後も、神の支配に抵抗する人間の自己主張の象徴となりました。T歴代1:10。ミカ5:6では、「ニムロデの地」をアッシリアと並行して語り、ニムロデの記憶を後のメソポタミアの大帝国と結び付けています。ニムロデは、王国を立てました。10節。その王国は、バビロニアとアッシリアの両地域に広がり、メソポタミア全体の象徴となりました。その中にはアッシリアのニネベがあります。この地方の都市は、後にイスラエルの歴史において大きくかかわって来ます。
 「主の前に」という人物評価は、公然と神に反抗し、際立った存在観を示すという意味です。ニムロデは、人間が能力を武力や技術力を駆使して、自己顕示的な目的のために用いることを体現しています。ニムロデの力は、後のバベルの塔やメソポタミア地域の大帝国につながって行きます。しかし、そのような都市文明を築いても、神に感謝することがありません。ただ自分の力、自分の能力で成し遂げたと考えたのです。ですから、神の恵みを忘れて、神に感謝することがなければ、ニムロデのように神に反抗しているのと変わりありません。自分ですべて成し遂げたと考えることなく、神の恵みと助けを忘れないようにと願います。詩篇103:2〜5。
 現代の権力者にも、ニムロデのような姿が多く見られます。バビロニアやアッシリアによる圧制の根源を辿り、人間の傲慢と神の主権との間の継続的な葛藤を浮き彫りにしています。ですから、聖書は、このような記録を通して、人々がニムロデのような轍を踏まないようにという教訓が込められています。キリストの主権のもとで自分の中にキリストの王国を立てるようにと、イエス様の救いに導いています。Tテモテ1:13〜15。神に反抗する者も欲に翻弄されていた者も、イエス様の十字架の犠牲によって救われ、変えられることができます。
 しかし、神に反抗し、力を誇ったニムロデの罪の姿は、その子孫に引き継がれ、結局世界に散らされるようになります。11:9。バベルの塔の事件です。ヨシュアの時代には、ハムの子孫であるカナンの諸氏族は、セムの子孫によって征服され、追い出されるようになります。申命記9:5。

V−祝福を受け、神の民となって行く−21〜32
 三番目にセムの子孫について記されています。21〜31節。メソポタミア、中東に広がります。この子孫によって神の御心が成し遂げられ、救いの御業へと繋がっていきます。こうして系図を通して民族の広がりを見て来ると、世界に多くの人々が広がったことが目的なく自然に繁栄したのではなく、洪水後の世界が再び人々で満たされるようにと神が命じられたからです。9:1。そして、地上に人々が増え広がるように働かれました。申命記32:8。神が人類の歴史に働かれ、人々の主である神が国民を分かれ出るようにされ、言語と民族にしたがって国民とされたのです。私たちは、神の摂理があるために、この地でこうして生かされているのです。
 25節にペレグという名が記されていますが、この人だけ「その時代に地が分けられたからである」と名前の由来が記されています。ペレグとは、分割、分けることを意味しています。そして、「その時代に地が分けられたからである」という表現は、バベルの塔事件に結び付けられています。11:4,9。その事件は、ニムロデのような人々の反抗を退けるためです。ペレグの世代は、神が人類を分け散らしながらも、セムの系譜を通して、歴史の中で神の導きが進んで行くことを教えています。
 神は、なぜニムロデのような人々が現れるにもかかわらず、地上に人々が増え広がり、繁栄するようにされたのでしょうか。救いのご計画を進めるためです。その始まりは、「女の子孫」から救い主を、つまりイエス・キリストを送る約束です。3:15。神は、そのご計画を進めるために、セムの子孫を通して成し遂げるようにされました。25節のペレグからアブラハムへと繋がっていきます。11:11〜26。アブラハムを通して、救いの計画が進んで行きます。そして、やがて約束された救い主イエス様が登場されることになります。ルカ3:23, 34〜35。
 バベルの塔事件の離散が集団的な人々の傲慢さを裁いたのと同時に、その離散が人類を集団的な反抗の罪から守り、アブラハムを通して救いの計画の舞台を整えることになります。ペレグは、T歴代1:19,25にも繰り返し記されています。そして、セムの系図のペレグをイエス・キリストの系図に含め、アブラハムの系図を通して伝えられた救いの約束が最終的に成就することを示しています。ルカ3:23,34〜35。ですから、たとえ事件や問題で分けられ、散らされることがあっても、決してマイナスばかりでなく、やがてイエス様によって導かれて、回復され、繋がれ、救いの恵みを受ける過程となるということを覚えたいのです。使徒17:26〜27。



創世記10:1 これはノアの息子、セム、ハム、ヤフェテの歴史である。大洪水の後、彼らに子どもが生まれた。
10:2 ヤフェテの子らはゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メシェク、ティラス。
10:3 ゴメルの子らはアシュケナズ、リファテ、トガルマ。
10:4 ヤワンの子らはエリシャ、タルシシュ、キティム、ドダニム。
10:5 これらから島々の国民が分かれ出た。それぞれの地に、言語ごとにその氏族にしたがって、国民となった。
10:6 ハムの子らはクシュ、ミツライム、プテ、カナン。
10:7 クシュの子らはセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカ。ラアマの子らはシェバ、デダン。
10:8 クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の勇士となった。
10:9 彼は主の前に力ある狩人であった。それゆえ、「主の前に力ある狩人ニムロデのように」と言われるようになった。
10:10 彼の王国の始まりは、バベル、ウレク、アッカド、カルネで、シンアルの地にあった。
10:11 その地から彼は、アッシュルに進出し、ニネベ、レホボテ・イル、カルフ、
10:12 およびニネベとカルフとの間のレセンを建てた。それは大きな町であった。
10:13 ミツライムが生んだのは、ルディ人、アナミム人、レハビム人、ナフトヒム人、
10:14 パテロス人、カスルヒム人、カフトル人。このカスルヒム人からペリシテ人が出た。
10:15 カナンが生んだのは長子シドン、ヒッタイト、
10:16 エブス人、アモリ人、ギルガシ人、
10:17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、
10:18 アルワデ人、ツェマリ人、ハマテ人。その後、カナン人の諸氏族が分かれ出た。
10:19 それでカナン人の領土は、シドンからゲラルに向かって、ガザに至り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムに向かって、ラシャにまで及んだ。
10:20 以上が、その氏族、その言語ごとに、その地、国民ごとの、ハムの子孫である。
10:21 セムにも子が生まれた。セムはエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェテの兄であった。
10:22 セムの子らはエラム、アッシュル、アルパクシャデ、ルデ、アラム。
10:23 アラムの子らはウツ、フル、ゲテル、マシュ。
10:24 アルパクシャデはシェラフを生み、シェラフはエベルを生んだ。
10:25 エベルには二人の男の子が生まれ、一人の名はペレグであった。その時代に地が分けられたからである。彼の兄弟の名はヨクタンであった。
10:26 ヨクタンが生んだのは、アルモダデ、シェレフ、ハツァルマベテ、エラフ、
10:27 ハドラム、ウザル、ディクラ、
10:28 オバル、アビマエル、シェバ、
10:29 オフィル、ハビラ、ヨバブを生んだ。これらはみな、ヨクタンの子であった。
10:30 彼らが住んだ地は、メシャからセファルに及ぶ東の高原地帯であった。
10:31 以上は、それぞれ氏族、その言語、その地、国民ごとの、セムの子孫である。
10:32 以上が、それぞれの家系による、国民ごとの、ノアの子孫の諸氏族である。大洪水の後、彼らからもろもろの国民が地上に分かれ出たのである。


申命記32:8 いと高き方が、国々に、相続地を持たせ、人の子らを、割り振られたとき、イスラエルの子らの数にしたがって、もろもろの民の境を決められた。

使徒17:26 神は、一人の人からあらゆる民を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに決められた時代と、住まいの境をお定めになりました。
17:27 それは、神を求めさせるためです。もし人が手探りで求めることがあれば、神を見い出すこともあるでしょう。確かに、神は私たち一人ひとりから遠く離れてはおられません。

Tテモテ1:13 私は以前には、神を冒涜する者、迫害する者、暴力をふるう者でした。しかし、信じていないときに知らないでしたことだったので、あわれみを受けました。
1:14 私たちの主の恵みは、キリスト・イエスにある信仰と愛とともにあふれました。
1:15 「キリスト・イエスは罪人を救うためにこの世に来られた」ということばは、真実であり、そのまま受け入れるに値するものです。私はその罪人のかしらです。

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